どうも精密栄養カウンセラーのナカハラです。
実体験や日々の学びを元に、皆さんに役立つ健康情報をお届けしています!
お盆休み、みなさま如何お過ごしでしょうか?
イレギュラーな台風で天気が不安定なので、なかなか移動しにくいですね。
僕もこのお盆に、ドローンの案件が2件ほどありましたが、両方とも延期になり、ぽっかり時間ができたところです!
案件をくださった方には失礼かもしれませんが、この空きはむしろ嬉しい笑
やろうと思っていたことが進むので、これはこれで良しとしています!
さて、過去2回にわたってお届けしたエネルギー回路の話がありがたいことに好評でした。
本日はその最終形態、電子伝達系。
これで糖代謝の理解がひと区切りつくので、過去2回と合わせて読んでいただけると全体像が見えてくるはずです!
■Podcastの配信をしています!
こちらからぜひどうぞ!
エネルギー代謝の全体像
三段構えで、ATPは作られる
糖代謝におけるエネルギー回路は、3つの段階に分かれています。
① 解糖系 … 細胞質でグルコースを分解し、ピルビン酸を生成
② クエン酸回路(TCA回路) … ミトコンドリアの中でぐるぐる回り、電子運搬体を作る
③ 電子伝達系 … 運ばれた電子を使って、ATPを大量生産する
この電子伝達系で、エネルギー通貨であるATPが大量に生成されます。
第1段階:解糖系
舞台は細胞質基質、いわゆる細胞質ゾルです。
核やミトコンドリアといった細胞小器官を除いた、液体状の部分。
ここで起こるプロセスは酸素を必要としないため、嫌気的反応と呼ばれます。
エネルギーというと酸素を使うイメージがありますが、この段階ではまだ登場しません。
1分子のグルコースが分解を重ねて、2分子のピルビン酸になる。
その過程で生まれるのが、次の2つです。
ATP … 2分子
NADH(電子運搬体) … 2分子
このNADHが持っている電子も、シャトル機構などを介して最終的に電子伝達系へとつながっていきます。
キーマンだと思っておいてください!
第2段階:クエン酸回路
解糖系で作られたピルビン酸は、酸素があるとミトコンドリア内部に取り込まれます。
ここで初めて酸素が登場。
そして酸化的脱炭酸という反応を経て、アセチルCoAに変換される。
酸化とは、専門的に言えば電子が外れること。
脱炭酸は、CO₂が外れること。
つまり電子が外れながらCO₂も外れる、外れまくる反応です笑
この過程でもNADHが2分子生まれ、二酸化炭素が放出。
できたアセチルCoAはオキサロ酢酸と結合してクエン酸になり、ここから回路が回り始めます。
中間代謝物を作りながらぐるぐる回転し、一周してまたオキサロ酢酸に戻る。
この一連で、NADHとFADH₂という電子運搬体が大量に生成されます。
同時に二酸化炭素が排出され、ATPも少量(2分子)作られる。
そしてこの電子運搬体が、いよいよ電子伝達系へ電子を供給します!
電子伝達系とは何か
舞台はミトコンドリアの内膜
解糖系とクエン酸回路が作った、NADHとFADH₂。
この電子運搬体が、ミトコンドリアの内膜上へ電子を運び込みます。
内側の膜の上に、電子をぴょこっと運んでくるイメージです。
4つの複合体を、電子がリレーする
運ばれた電子は、内膜にあるタンパク質複合体を経由して段階的に伝達されます。
複合体はⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳと4つあり、それぞれ役割が違う。
NADHから来た電子は主に複合体Ⅰから、FADH₂由来の電子は複合体Ⅱから入り、その後の経路で合流しながら複合体Ⅲ、Ⅳへと受け渡されていきます。
全員が同じスタート地点ではないけれど、最終的には同じゴールを目指すリレーです。
ATP生産の仕組みは「ダム」と同じ
電子が動くと、エネルギーが生まれる
「電子伝達のエネルギー」と言われても、ピンとこないですよね。
物を運んだり動かしたりすると、エネルギーが発生します。
物理でも聞いたことがあるかもしれません。
ここでは「電子が伝達されるとエネルギーが出る」と思ってください。
水素イオンが膜間腔へ汲み出される
そのエネルギーを使って、水素イオンが内膜を越えていきます。
ミトコンドリアには膜間腔という隙間があり、そこへ汲み出される。
もともと内側にあったものが、外側にぴょこっと出るわけです。
内と外で、濃度が変わる
すると内と外で、水素イオンの濃度が変わります。
これが濃度勾配です。
よくダムで例えられます。
ダムを隔てて、外側と内側で水の高さが違うじゃないですか。
そこでダムが開けば、高いところから低いところへブワーッと水が流れる。
それと同じようなことが起きています!
出口にあるのがATP合成酵素
濃度差を解消しようとして、水素イオンは元の側へ流れ戻ります。
そのとき通る出口が、ATP合成酵素という特殊な酵素。
ここを通って、マトリックス内へと戻っていきます。
このぐるぐるの流れの中でエネルギーが生じ、それを使って大量のATPが作られます。
26〜28ATPという桁違いの効率
解糖系とクエン酸回路は、それぞれ2ATP
この反応でのエネルギー効率が、とにかくやばいです!
電子伝達系では、26〜28ATPが生成。
今までが2だったので、10倍以上の効率です!
電子の最終到達点は、酸素
電子伝達系ではあちこちで電子のやり取りが行われますが、その電子は最終的に酸素と結びつきます。
そして水が形成される。
ここも一つのポイントです。
細胞呼吸の核心
細胞が栄養素からエネルギー(ATP)を取り出す仕組みを、細胞呼吸と呼びます。
いま説明したプロセスこそが、その核心。
細胞が最も効率よくATPを合成する、重要な仕組みと言われています!
酸化的リン酸化という名前の意味
「酸化」と「リン酸化」に分けて読む
電子伝達系でATPが合成されるプロセスは、酸化的リン酸化と呼ばれます。
NADHやFADH₂が電子伝達系に電子を渡すことで「酸化される」際に、エネルギーが生まれる。
酸化とは電子が取れること、でしたね。
そのエネルギーを使って、ADP(ATPになる前のもの)にリン酸を1つ付加する。
ADPにリン酸が付加されて、ATPになる。
だから酸化的リン酸化です!
NADHは約2.5、FADH₂は約1.5
具体的な数字も見ておきましょう。
1分子のNADHから … 約2.5分子のATP
1分子のFADH₂から … 約1.5分子のATP
少し差がありますよね。
これは、電子が渡される複合体の違いから生まれています。
NADHとFADH₂では入り口が違うので、経路が変われば生み出されるATPの数も変わります。
グルコース1分子から、30〜32ATP
三段階の合計
解糖系から電子伝達系まで合わせると、1分子のグルコースから約30〜32分子のATPが生成されます。
解糖系で2、クエン酸回路で2、電子伝達系で26〜28。
電子伝達系は少しブレがあるらしいです笑
30個は、多いのか
大量、大量と言っていますが、30ちょっとという数字に「そんなに多いですか」と思った方もいるはずです。
これは個数の感覚ではありません。
この仕組みがずっと回り続けて、一生作り続ける。
だからこその「大量」であり、細胞の生命活動を維持する重要な仕組みになっています!
変わるのは数ではなく、回転スピード
「ミトコンドリアを活性化して元気になりましょう」というのは、ここが効率よく回りやすくなるという話です。
1グルコースあたりのATPは、30〜32のまま変わりません。
活性化で変わるのは、回るスピードのほう。
生まれる速さが上がれば、より多くのATPが体内で回ることになります。
だからミトコンドリアにいい生活をすると、元気になります!
なぜ「ミトコンドリアにいい生活」なのか
健康法の裏側にある仕組み
疲れやすい人ほど注目したいエネルギー回路の話は、すべてここに繋がります。
ミトコンドリアの質を高めるために言われていることを並べると、こうなります。
糖代謝だけでなく、ケトン体も使えるようにする
断食(ファスティング)を取り入れる
息が上がるくらい心拍数を上げる
水を浴びる、身体を冷やすといった寒冷刺激を入れる
健康法としてよく聞くものばかりですね!
仕組みまで理解すると、なぜそれが言われているのかが見えてきます。
根拠のない「活性化」への注意
以前もお伝えしましたが、ミトコンドリア活性化を謳う根拠のない施術が世の中には出てきています。
騙されないように、というお話もしてきました。
知識は武器です。
知っておいて損はない話だったのではないでしょうか!
まとめ
本日は電子伝達系のお話でした。
場所:ミトコンドリアの内膜
材料:解糖系とクエン酸回路が作ったNADH・FADH₂
仕組み:電子が4つの複合体をリレー → 水素イオンが膜間腔へ → 濃度差を解消しようとATP合成酵素を通って戻る(=ダム)
産物:26〜28ATP。最後に電子は酸素と結びついて水になる
名前:この一連が「酸化的リン酸化」、全体が「細胞呼吸」
合計:グルコース1分子あたり、約30〜32ATP
忘れてはいけないのが、1グルコースあたりのATP数は変わらないということ。
活性化で変わるのは、回転のスピードです。
だからケトン体、断食、運動、寒冷刺激といった健康法が出てくる。
仕組みが分かれば、何をすればいいのかも自然と見えてきます。
そこから先の「自分には何が足りていないのか」は人によって違うので、まずは現在地をデータで知ることから始めてみてください!
お盆も台風であちこち大変ですが、こういうときこそゆったり過ごすのも悪くないなと思っています。
それでは、今日も健康で!
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参考文献・エビデンス一覧
[電子伝達系の全体像・4つの複合体・ATP合成酵素(複合体V)]
Ahmad, M., Wolberg, A., & Kahwaji, C. I. (2023). Biochemistry, Electron Transport Chain. In StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing. (PMID: 30252361 / Bookshelf ID: NBK526105)
※ATP合成酵素は「複合体V」と呼ばれますが、電子の受け渡しそのものには関与せず、電子伝達系が作った水素イオンの濃度勾配を使ってATPを合成します。本文の「ダム」の出口にあたる部分です。
[酸化的リン酸化・NADH約2.5/FADH₂約1.5という収量差]
Deshpande, O. A., & Mohiuddin, S. S. (2023). Biochemistry, Oxidative Phosphorylation. In StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing. (PMID: 31985985 / Bookshelf ID: NBK553192)
※FADH₂の収量が少ないのは、複合体Ⅰを迂回して複合体Ⅱから電子が入るため、汲み出される水素イオンが少なくなることによります。数値は理論値で、実際の収量は細胞の状態により幅があります。
[化学浸透説(水素イオンの濃度勾配でATPを作る、という考え方の原典)]
Mitchell, P. (1961). Coupling of phosphorylation to electron and hydrogen transfer by a chemi-osmotic type of mechanism. Nature, 191(4784), 144–148.
※本文の「ダム」の例えは、この化学浸透説(chemiosmosis)を日常のイメージに置き換えたものです。ミッチェルはこの業績で1978年にノーベル化学賞を受賞しています。
[解糖系(10段階・細胞質・ピルビン酸生成)]
Chaudhry, R., & Varacallo, M. A. (2023). Biochemistry, Glycolysis. In StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing. (PMID: 29493928 / Bookshelf ID: NBK482303)
[クエン酸回路(TCA回路)]
Alabduladhem, T. O., & Bordoni, B. (2022). Physiology, Krebs Cycle. In StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing. (PMID: 32310492 / Bookshelf ID: NBK556032)
Arnold, P. K., & Finley, L. W. S. (2023). Regulation and function of the mammalian tricarboxylic acid cycle. Journal of Biological Chemistry, 299(2), 102838.
[ミトコンドリア新生とPGC-1α(運動・絶食・寒冷刺激との関係)]
Abu Shelbayeh, O., Arroum, T., Morris, S., & Busch, K. B. (2023). PGC-1α is a master regulator of mitochondrial lifecycle and ROS stress response. Antioxidants, 12(5), 1075.
Chung, N., Park, J., & Lim, K. (2017). The effects of exercise and cold exposure on mitochondrial biogenesis in skeletal muscle and white adipose tissue. Journal of Exercise Nutrition & Biochemistry, 21(2), 39–47.
※運動・絶食・寒冷刺激がPGC-1αを介してミトコンドリア新生を促すことは複数の研究で報告されていますが、多くは動物実験や短期の介入研究です。「どの刺激を、どの程度」が最適かは個人差が大きく、現時点で万人向けの処方があるわけではありません。
[ケトン体のエネルギー効率・脳での利用]
Veech, R. L. (2004). The therapeutic implications of ketone bodies: the effects of ketone bodies in pathological conditions: ketosis, ketogenic diet, redox states, insulin resistance, and mitochondrial metabolism. Prostaglandins, Leukotrienes and Essential Fatty Acids, 70(3), 309–319.
※ケトン体の「効率の良さ」は主に酸素消費あたりのATP産生や酸化還元電位の観点から論じられているもので、体感的なパフォーマンス向上と直結するかは条件により幅があります。














